投稿日 : 2021年10月27日 最終更新日時 : 2022年09月06日
【解説資料】登録M&A支援機関制度とは
新たにM&A支援機関の登録制度が始まりました。登録制度により、M&Aに不慣れな依頼人であっても一定の安心感をもってM&A依頼が可能となります。当社もフィナンシャルアドバイザー(FA、代理人型のM&A支援機関)として登録されています。
1.登録制度の経緯と概要
団塊世代の経営者の高齢化や後継者難を背景に中小企業の事業承継が活発化しています。中小企業庁によれば潜在的な譲渡企業数は大小合わせて30万とのことで膨大です。
これまでM&Aは金融機関や士業を中心にコーポレートファイナンス・企業金融の枠組みで会話されることの多かったのですが、M&A 案件の小規模化に伴い、モノの売買、マッチングのような枠組みで会話されるケースも見聞きします。隔世の感が有ります。そのような状況で不動産、人材、IT、EC等様々な企業がM&A事業に参入しています。
当局は、中小企業側にM&Aの知見が無いことやM&A会社の質に差があることを踏まえ、「中小M&Aガイドライン」という規律文書(後述)を作成しています。
「中小M&Aガイドライン」の遵守を誓約した企業はM&A支援機関として当局に登録されます。これが登録制度です。登録制度により、M&Aに不慣れな依頼人であっても一定の安心感をもってM&A依頼が可能となります。
2.「中小M&Aガイドライン」の概要
「中小M&Aガイドライン」の主なポイントは以下の通りです。
念のため補足すると、利益相反の問題がしばしば取り上げられるM&A仲介ですが、依頼人の不利益となりうる点を明記すること等を前提に認められています。
3.登録制度の直接的な意味
中小企業のM&Aにおいて、登録M&A支援機関に対する仲介手数料や助言費用は中小企業向けの補助金制度(M&A費用の一部補助)の適用対象となります。
登録しているM&A支援機関は顧客に選ばれやいことから、M&A事業者側でもガイドラインを遵守して登録するインセンティブが生じます。その結果、ガイドラインを遵守していない非登録M&A支援機関は悪い意味で目立つと予想されます。
なお、大手企業は補助金対象ではなく、「中小M&Aガイドライン」の対象でもありません。相談できる専門家が存在する大手企業にとっては直接に意味を持つ制度では有りません。
4.M&A市場に与える影響
「中小M&Aガイドライン」を遵守することがM&A事業者のビジネススタンダードになると思われます。これによって業界全体の底上げがなされ、苦情やトラブルは減少すると予想されます。
また、M&A支援に対する不信感がある程度払しょくされれば、事業承継の更なる活発化が期待されます。
適切かつ円滑な事業承継は、雇用やサプライチェーンの維持、ひいては日本経済・地域経済の維持活性化に寄与します。
現状は廃業による雇用やサプライチェーンの崩壊を防ぐことが重視されているため、事業承継=正義です。しかしながら、経済活性化を重視する場合、対象会社の価値・潜在力を最も引き出せる買い手に譲渡することが望まれます。経済学でいう最適資源配分の問題です。1対1のマッチング(仲介)で果たしてそのような機能が果たせるのかも含め、次のステップの課題になり得ます。
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