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投稿日 : 2021年8月6日 最終更新日時 : 2022年09月07日

【解説資料】日本企業のキャッシュポジションとM&Aトレンド

日本の民間企業は全体として320兆円の資金を有しており、手元資金は増加傾向です。コロナ禍で大きな影響を受けた企業も多いですが、全体として見た場合には資金余剰が進んでいると考えられます。資金余剰等を背景にM&A市場は活況を呈しており、この状況は当面続くと予想されます。

 

1.日本企業のキャッシュポジション

日本の民間企業セクターは2021年3月末で320兆円の資金を有しています。コロナ禍前の2019年3月末対比で52兆円の大幅増加です。個人金融資産1,800兆円(直近では1,950兆円)に比べると数字が小さいように見えますが、日本の国家予算の半分以上増加していることになります。

 

(出所)日本銀行

 

増加額の全てが余剰資金という訳ではなく、特にコロナ禍に伴う緊急融資で借り入れた資金については将来の返済に充当されたり、事業安定化のための運転資金をして活用されることが見込まれます。2020年4月~6月にかけて民間企業セクター全体で借入金が30兆円以上増加しており、資金は26兆円増加しています。この部分が緊急融資に該当すると思われます。

仮に資金増加額のうち26兆円部分を非余剰資金の増加と見做して控除すると、2019年3月末以降の余剰資金増加額は26兆円(資金増加額52兆円-非余剰資金増加額26兆円)です。それでも大幅な資金増加です。

 

(出所)日本銀行

 

コロナ禍で大きな影響を受けた企業も多いですが、”日本企業全体として見た場合”、資金余剰が進んでいると考えられます。

 

2.M&Aトレンド

M&Aは投資の一形態であり、資金余剰の企業が多い程、M&A市場は活発になりやすいと考えられます。

M&A統計によれば直近の2021年上半期(1月~6月期)にM&A取引(公表案件)は合計10兆円を超え、前年同期比対比で大幅増加を示しています。日本のM&A市場は活況で、特にハイテクセクターでの動きが顕著です。

 

【2021年上半期の大型M&A(例)及びディールサイズ】

  • Hitachi Global Digital Holdings (インド)によるグローバルロジックの買収:10,598億円
  • パナソニックによるブルーヨンダーの買収:7,664億円
  • ルネサスエレクトロニクスによるダイアログ・セミコンダクターの買収:6,224億円
  • ベインキャピタルによる日立金属の買収:4,347億円
  • ソフトバンクによるオートストアのマイノリティ株式の取得:3,050億円

出所:SPEEDA

 

また、大手M&A仲介会社の業績を見る限り事業承継M&Aも活況です。

今現在でも事業拡大や事業変革を目的として積極的に投資先・買収先を探している企業は多く、企業側の資金余剰にも支えられながら、M&A市場の活況は当面続くものと予想されます。

 

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