投稿日 : 2023年4月25日 最終更新日時 : 2023年04月25日
【コラム】1~3月期のM&Aの動向と今後の展望
1.2023年1~3月期のM&A動向
M&A統計によれば、2023年1~3月期の日本企業が関連するM&A公表案件は、総額5.3兆円(前年同期比+18.5%)、件数は1,129件(前年同期比△11.1%)となりました。M&A金額は大型案件の影響による増加です。
2.2023年1~3月期の主なM&A
2023年1~3月期の主なM&A案件は以下の通りです。
(参考: SPEEDA、Refinitive)
・東芝は日本産業パートナーズを中心とした国内連合により買収見通し
2015年の不正会計問題発覚以降、様々な課題に直面していた東芝ですが、国内投資ファンドの日本産業パートナーズグループによる買収提案を受け入れ、同社を中心とした国内企業連合による非上場化と経営再建に向けて舵を切りました。
・海外政府系ファンドによる人事給与システム大手の買収
シンガポール政府系ファンドのGICなどによる人事給与システム国内大手、ワークスヒューマンインテリジェンスの買収です。GICは日本では不動産を中心に投資をしてきましたが、企業への投資も本格化するようです。
・JERAによるパークウィンドの買収
大手発電会社であるJERAによるベルギーの洋上風力発電企業の買収です。JERAは再生エネルギー発電アセットの上積みに加え、欧州での洋上風力発電のノウハウをアジアなどでの開発力強化に活用する模様です。
洋上風力発電に関しては、国内での洋上風力コンペ(公募競争)で大手商社や大手エネルギー会社が熾烈な競争をしたのは、報道等でも良く知られているところです。
・オリックスによるDHC買収
オリックスによるDHC創業者からの大型事業承継です。事業承継で1000億円規模以上の大型案件は非常に珍しいことに加え、M&A仲介会社が手掛けた大型案件としても注目を浴びました。
オリックスはDHCの主力である健康食品や化粧品について、自社の企業価値向上ノウハウやグループネットワークを活用しバリューアップに注力する方針です。なお、買収対象は全てではなく、リゾートホテル、テレビ・ラジオ、深層水などの事業は買収対象外となっています。
・メガバンクによる東南アジア展開
23年3月、三井住友銀行はベトナムのベトナム・プロスペリティー・ジョイント・ストック・コマーシャル・バンク(VPバンク)の第三者割当増資を引き受け、15%の株式を取得すると公表しました。VPバンクは三井住友銀行の持分法適用会社となる見通しとのことです。
三井住友銀行は2007年以来、ベトナムのエグジムバンクと資本提携関係にありましたが2022年に提携関係の解消を公表していました。
3.まとめ
今期は新型コロナの各種規制の撤廃により、国内経済が活気を取り戻すことが期待されます。今まで動けなかったM&A案件が動くこともあるでしょう。他方で金融面では、金利上昇や中小企業における特別融資の終了など、厳しさを感じる企業もでてくると思われます。
良いことばかりとは限りませんが、M&A環境の正常化に向けた一年となりそうです。
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