投稿日 : 2023年6月27日 最終更新日時 : 2023年06月27日

【コラム】ノンネームシートの役割

 

M&A案件の初期資料はノンネームシート(又はティーザー)と呼ばれます。案件入り口段階で買い手に興味を持ってもらうための重要な資料です。ノンネームシート上にどのような情報を記載するかは、案件推進と機密保持の微妙なバランスを踏まえながら判断されます。実務的にはM&A専門家が案件ごとに検討し、依頼人と相談の上で決定します。

 

 

1.ノンネームシートとは

ノンネームシートとは、社名非開示の案件情報シートです。買い手に興味を持ってもらうために、案件の入り口段階で売り手側より示されます。中小規模案件では、次のような情報が1枚程度に纏められています。

ー事業内容、業歴、所在地

ー社員数

ー売上規模、その他の財務規模

ー案件背景

 

興味を持った買い手は、M&A会社や売主に守秘を誓約し、案件にアクセスするという流れになります。

少し案件が大きくなり、買い手候補層に大企業が含まれるようになると、経営環境に対する分析やコメントがなされ、魅力ポイントのまとめ(投資ハイライト)などが入ることもあります。

ページ数が少ない=簡単に作成できる、と思われがちですが、ベストを尽くそうと思うとノンネームシートで手を抜くことはできません。

 

 

2.ノンネームシート作成時の考慮事項

定型のノンネームシートに機械的に情報を埋めることも考えられますが、買い手の関心を引く観点からは機械的な作業は望ましくなく、必要な情報を適切な形で示すことを目指すことになります。

 

どのような情報をどのように記載すべきか、開示すべき情報と機密保持のバランス次第です。一律の方法はなく、個別案件ごとに、以下のような要素を加味しながらM&A専門家が依頼人と協議しながら検討することが一般的です。

 

 

・ 開示先・打診先数

不特定多数に開示するような場合、どこでどのような影響が出るかは読み切れません。開示先が多ければ多い程、情報を絞る方向に寄っていきます。

 

 

・ 特定のされやすさ

ニッチな業界や珍しい会社であるほど会社が特定されやすい傾向にあります。特定された時の影響を念頭に置きつつ、特定されやすい表現を避けることになります。

 

 

・ 魅力度の伝達の必要性

買い手が積極的に情報を把握するためには手間やコストがかかります。売り手から見ると買い手が的確な分析をしてくれるとは限りません。可能な範囲で入り口段階で魅力度を伝達することが望ましく、できる限りの工夫をする方向に寄っていきます。

 

 

・ 大企業の有無

大企業では守秘義務契約締結のために相応の社内稟議や調整が必要になることがあります。買い手候補に大企業を含める場合は、守秘義務契約締結の判断ができる程度の初期情報開示は覚悟しておく必要があります。

 

3.まとめ

ノンネームシートは買い手に興味を持ってもらうための入り口となる重要な資料です。一見簡単な資料に見えますが、機械的に作成するよりも、案件や会社の状況を踏まえながらどの程度情報をどのように記載すべきか個別に判断することが効果的です。

ノンネームシートにある程度の情報を記載する場合は単なる資料作成とは別次元の専門的なスキルが必要となります。そのため、ノンネームシート作成はM&A専門家がリードすることが一般的です。

 

 

 

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